29. 駐車場使用料は競落人に対して請求できないの?


駐車場使用料は競落人に対して請求できないの?
東京地方裁判所平成20年11月27日判決(判例集未搭載)



【ざっくりどんな事案?】

管理費等を滞納していた住戸が競売になり、不動産会社が競落しました。

この会社は、管理費や修繕積立金の滞納分は払ってきたのですが、
駐車場使用料の滞納分については支払義務はないはずだといって、払ってくれません。

なお、私たちの管理規約は標準管理規約に準拠しています。



【裁判所の判断を簡単にいうと?】

駐車場使用料も、区分所有法7条1項に定める
「規約・・に基づき他の区分所有者に対して有する債権」に該当する。

よって、区分所有法8条に定める「債権」に該当するから、
競落人(特定承継人)は管理組合に対して支払義務を負う。

※区分所有法8とは・・・
「前条第1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。」



【この裁判例から学べること】

管理費や修繕積立金、違約金としての弁護士費用などについては、
滞納者から物件を取得した者(「特定承継人」と呼びます)もまた、
管理組合に対して支払義務を負います(区分所有法8条)。

このことはもはや一般取引通念上も常識となってきました。

他方、駐車場使用料や駐輪場使用料などの支払義務については、
少なくとも10年くらい前までは、激しい争いがありました。

両者の違いは、比喩的に表現すると、
「部屋そのものについてまわる債務」(専用庭使用料などもこれに含まれます)か、
それとも「人についてまわる債務」か、という点にあります。

標準管理規約準拠のマンションにおいては、駐車場使用料や駐輪場使用料は、
区分所有者となったことに伴って当然に発生する債務ではなく、
管理組合との契約行為を経て初めて発生する債務であるため、
あくまで「人についてまわる債務」だから、滞納者とは別人である特定承継人は、支払義務を負わないのでは?
という見解があったのです。この見解に基づく裁判例も存在していました。

とはいえ、特定承継人による支払義務を定めた区分所有法7条1項は、
対象となる債権について、単に、「規約・・に基づき他の区分所有者に対して有する債権」
としか規定していないわけですから、これをあえて
「ここでいう『債権』には、人についてまわる債務は含まれない」
制限的に解釈する必要性はありません。

そのため、この裁判例を含め、近時は駐車場使用料などの
「人についてまわる債務」についても、それが規約(又は総会の決議)に
きちんと根拠が規定されている限りは、特定承継人の
支払義務を肯定する裁判例がほとんどとなっています。

管理組合の立場からは、自信をもって特定承継人(トラブルになるのはほとんどが競売で取得した競落人です)
に対して請求しましょう。