10. 共用部分を時効によって取得することができる?

共用部分を時効によって取得することができる? 
東京地方裁判所平成26年10月28日判決(判例集未搭載)


【ざっくりどんな事案?】

私たちのマンションは築年数がかなり経過しているのですが、
分譲当初頃から、マンションの1階の一部を屋内駐車場(対象部分)として、
管理組合が第三者に貸していました。
この対象部分は専有部分として登記されたことはありません。

ところが、この対象部分に隣接する専有部分(ここは登記されています。)の
区分所有者(原告)から、対象部分も自身の専有部分の一部に含まれるとして、
管理組合(被告)に対し、対象部分の明渡請求訴訟を提起されてしまいました。

【裁判所の判断を簡単にいうと?】

・前提として、対象部分は以下の理由から、専有部分とは認められない。

・四方のうち、駐車場であるから一方は仕方ないとしても、もう一方も分譲当時は
 開放されていた。このように、四方のうちの二方が開放されている部分は、
 構造上の独立性があるとはいえない。

・マンションの許容延べ床面積は1350.951㎡であるところ、対象部分を除いた
 床面積は1350.55㎡であり、対象部分を含めると容積率オーバーとなる。
 よって、分譲当時から、対象部分を独立した専有部分とする意図もなかったはず。

・その上で、原告による、「仮に共用部分であるとしても、自分は対象部分を時効取得したはずだ」
 という主張に対して以下のとおり否定した。

・共用部分は、区分所有法上、区分所有者全員の共有に属すべきもの。
   
・区分所有法は、共用部分を、民法の共有規定とは異なる規制に
 服させている(区分所有法13条~21条)。
   
・このような区分所有法上の共用部分の性質からすると、共用部分の時効取得という
 事態は区分所有法の予定しているところはいえないから、
 時効取得の要件を満たしたとしても、時効取得はそもそも法律上認められない。

【この裁判例から学べること】

屋内駐車場が専有部分か共用部分かという議論は、古くから判例の集積がある分野です。
最高裁判例により、多くのケースでは専有部分と判断されることになっています。
よって、そうであるにもかかわらず、屋内駐車場について共用部分であると判断した
前提部分も貴重です。個人的には、対象部分が専有部分として登記されていなかったことが
大きな理由になったのではと感じています。

その上で、この裁判所は、およそ共用部分を時効取得することは、そもそも法律上認められないと断じました。
区分所有法は、民法の所有権(共有)規定の特別法という位置づけがありますので、
この特別法としての特殊性を十分考慮した、妥当な判断だと考えています。
まだまだ議論は進んでいませんが、このような区分所有法の特殊性が影響する論点は、
例えば付合(民法242条)の問題など、少なくないと思っています。