22. 理事の家族が代理で出席した理事会の決議は無効になる?


理事の家族が代理で出席した理事会の決議は無効になる?
最高裁判所平成2年11月26日(判例タイムズ744号89頁)


【ざっくりどんな事案?】

※実際には管理組合法人の事案でしたが、より多くの管理組合に妥当する議論とするため、
非法人の管理組合の事案に改変しています。

私たちのマンションは、いわゆるリゾートマンションであるため、区分所有者(多くはご主人です)が
理事会のために集まることが非常に困難です。
そのため、区分所有者の奥様やご子息が代理で理事会に出席して議決権を行使することができるようにするため、
「配偶者又は一親等内の親族に限り代理出席できる」と規約を変更しました。

ところが、区分所有者のお一人から、「総会の負託を受けた理事が、家族を代わりにするとはなにごとか!会社で取締役が
取締役会に家族を出席させたら大問題だろう!それと同じことだ!」
と主張して、この規約が無効であると訴えてきたのです。


【裁判所の判断を簡単にいうと?】

1 理事会への代理出席の可否は、「およそ団体であればこうだ!」というように一律に判断すべきものではなく、
  団体の性質ごとに個別に考えるべき。

そして、「団体から、理事に対して委任をした趣旨に反しないかどうか」という観点から、代理出席の可否を判断すべき。

2 これを管理組合という団体について検討すると、そもそも区分所有法は、
管理組合法人の意志決定プロセスについて、広く規約による自治に委ねている。

  よって、代理出席を広く認めることが可能である。そして、実際に制定された規約も、無制限に代理出席を認める内容ではなく、代理人の範囲を制限するなどしているから、これによって管理組合から理事に対して委任をした趣旨が没却するとはいえない。

3 よって、この規約は違法・無効とはいえない。



【この裁判例から学べること】

2回続けて、貴重(希少)な最高裁判例のご紹介となりました。マンション管理に興味のある方ならご存じの判例かもしれません。
管理業務主任者やマンション管理士の各試験にも頻出のようです。

この判例から学べることは、まず、「管理組合は株式会社とは違う」という点です。
もちろん、会社法は、一般法人法とともに団体法のトップランナーですから、
区分所有法について考える際も参照にすることは非常に多いです。

しかし、根本的に、【主として建物の維持管理のために強制的に成立する団体で、理事もボランティアであることが通例である管理組合】と、【営利目的のために自由意志で構成員(株主)が集まった団体で、取締役自身も報酬を得ていることが通例である株式会社】とでは、
大きな差異があることを見落としてはならないと思います。

次に、この判例に関して注意しなければならない点は、
「最高裁は、配偶者又は一親等内の親族に限って、代理出席を認めた」わけではない、という点です。

あくまでこの事案における規約が代理人資格を「配偶者又は一親等内の親族」に限っていただけであって、
この規定の有効性が争われたがために、「この規定は有効だ」と最高裁が判断したにすぎません。

むしろ、判決文中には、広範な規約自治を認める趣旨の記載がありますので、より広い範囲の代理人資格を認める
内容の規約も、広く有効と判断される可能性が高い
と考えられます。