17. 大事なことを決められるのは規約だけ?総会の決議では足りない?
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大事なことを決められるのは規約だけ?総会の決議では足りない?
東京高等裁判所平成15年12月4日(判例時報186号66頁)
【ざっくりどんな事案?】
私達のマンションはいわゆる複合型(店舗&住居)で地下有の10階建てマンションです。
地下1階から地上2階までの店舗部分のうち深夜や早朝まで営業している飲食店に対して、
住居部分の区分所有者からのクレームが相次ぎました。
そのため、総会の普通決議により、営業時間を午前10時から午後10時までに制限することを決定しました。
これに対し、店舗部分の区分所有者から、営業時間という専有部分の用法に関する事柄を決定できるのは規約だけであって、
総会の普通決議によっては決定することはできないとして、上記時間外も営業できることの確認を求める訴えが提起されました。
【裁判所の判断を簡単にいうと?】
1 前提として、専有部分の管理についても、総会の決議によっても制約を設けることができる。
2 その上で、専有部分の管理について、規約によるか、総会の決議によるか、あるいは基本事項を規約で定めて細目を総会の決議に
ゆだねるかなど、いくつかの方法をとることが考えられる。 これらはそれぞれ一長一短であるから、そのいずれによるべきかは
区分所有者の私的自治に委ねられているから、これを尊重すべき。
→結論:規約ではなく、総会の普通決議によっても決定できる。
【この裁判例から学べること】
専有部分の用法などの問題に限らず、マンション内部のルールは、規約か総会決議という法形式で定めるべきです。
なぜなら、この2つの法形式であれば、制定後に新しく区分所有者となった者も拘束できるからです。
これ以外の法形式でのルール設定(例えば、区分所有者と管理組合との「合意」)は、当該合意の中にどのような条項を入れたとしても、
制定(合意)に新しく区分所有者となった者を拘束できず、不十分です。
※この点が問われたものとして最高裁判所平成9年3月27日判決(判例タイムズ947号204頁)があります。
いつかご紹介したいと思っています。
その上で、では規約(=特別決議が必要)と、総会決議(=一部の例外を除いて普通決議で足りる)の、いずれを選択すべきでしょうか?
私見では、票数が足りそうなのであれば、規約によるべきです。
なぜなら、この裁判例とは異なり、「重要事項は規約(特別決議)によるべし」と述べた裁判例もいくつか存在するからです。
しかし、この裁判例の理論は説得的であり、上級審(高裁)の判断ということなどもあり、実務上はこれを根拠に対応することも
十分考えられます。よって、特別決議が成立するためには票数が微妙であるなどの事情がある場合には、総会決議でのルール設定を
ぜひ検討してください。