(1)改正の歴史

区分所有法の隙間を埋めるべく、旧建設省が1982(昭和57)年に公表したのが
「中高層共同住宅標準管理規約」です(なお、区分所有法の
所管官庁は法務省です。)。
このとき、同時に「中高層共同住宅標準管理委託契約書」も公表されています。

この翌年である1983(昭和58)年に、早速1回目の改正が行われました。
これは、区分所有法が同年に大改正されたこと受け、これを見込んで作成された
前年の標準管理規約に若干の追加・修正が必要となったためでした。

2回目の改正は1997(平成9)年です。
このときに、現在と同じく、単棟型・複合型・団地型の3類型となりました。

3回目の改正は2004(平成16)年です。この改正は、2000(平成12)年の適正化法の制定・
2002(平成14)年の区分所有法の改正・同年の円滑化法の制定に続く
一連のマンション管理制度の整備のラストを飾るものとなりました。

名称が現在と同様の「マンション標準管理規約」と改められたのみならず、
内容的にも、滞納管理費等の請求に関する規定の充実など、
実務上も非常に重要な改正が行われています。

4回目の改正は2011(平成23)年です。
役員のなり手不足に対応するため、役員の資格要件であった
「現に居住する(組合員)」(現住性)を削除するなどの改正が行われました。
また、この改正から、後述のとおり、標準管理規約の位置づけが修正されました。

5回目の改正は2016(平成28)年です。
大きな論争を呼んだ、いわゆるコミュニティ条項の削除はこのときです。
また、実務上必須となった暴排条項の整備も行われました。

6回目の改正は2017(平成29)年です。
住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)の制定に伴う改正が行われました。

7回目、かつ、現時点(2023年3月)での最後の改正となったのが2021(令和3)年です。
新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の社会的事象に対応し、
Web総会や理事会が明確に位置づけられました。



(2)標準管理規約の位置づけ

1997年に行われた2回目の改正までは、「・・この標準管理規約に示している事項の取扱いに
関しては、マンションの所在地等の個別の事情を考慮して、その内容に多少の変化をもたせることも
差し支えない」
とされていました。標準管理規約の「最大限尊重施策」と評されています。

これが、2011年に行われた4回目の改正からは、「・・この標準管理規約で示している事項に
ついては、マンションの規模、居住形態等それぞれのマンションの個別事項を考慮して、
必要に応じて合理的に修正し活用することが望ましい」
とされるに至っています。
標準管理規約の「修正活用施策」と評されています。



(3)標準管理規約の特徴

区分所有法と同内容の規定(=法的には、わざわざ規約に定める必要のない規定)が
多く見られます(例えば5条の「規約及び総会の決議の効力」など)。

これは、管理実務の現場において、いちいち区分所有法を参照することの
煩を避けることができるようにとの配慮からです。

また、標準管理規約はあくまで行政通達であって、それ自体には法的拘束力はありませんが、
その実務上の重要性から、実質的には区分所有法を補完していると評価されています。