11. 管理費等の滞納者が共有の場合、その持分に応じた金額しか請求できない?
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管理費等の滞納者が共有の場合、その持分に応じた金額しか請求できない?
東京地方裁判所平成25年11月13日判決(判例集未搭載)
【ざっくりどんな事案?】
管理費等の滞納者がいるのですが、登記を確認すると2分の1ずつの共有名義になっていました。
共有者のうちの一人がマンションに居住しており、勤務先も一流企業であることがわかったため、
どこの誰だかわからない他の共有者ではなく、この現に居住している共有者に対して
滞納分の全額を請求しました。
ところが、この共有者から、「持分に応じた支払義務しかないはずだ」と反論され、
2分の1を超える滞納分についての支払を拒否されています。
【裁判所の判断を簡単にいうと?】
・管理費は、共用部分の清掃や保守などの区分所有者に対する不可分的な利益の対価であるから、
分割債務ではなく、不可分債務(民法430条)に該当する。
・修繕積立金、専用庭使用料、自転車置場使用料も同様である。
・これらに対する遅延損害金も、これらに付随するものであるから同様である。
・違約金支払債務も不可分的給付の対価の不履行によって生じるものであるから同様である。
【この裁判例から学べること】
住戸の共有状態は、購入当初から夫婦が共有している場合などの他に、相続によって
やむを得ず生じることも多々あります。
この裁判例が示した判断は実務上確立しており、異論はみられません。
よって、共有住戸が管理費等を滞納した場合、管理組合としては、共有者中の任意の者
(例:連絡がつきやすい者、収入や資産がある者)に対し、債権の全額について
支払うよう請求することもできます。
もっとも、通常は、その後の競売などの事態も想定し、
共有者全員を被告として訴訟を提起することが多いでしょう。