19. 共用部分については、どんな些細な不具合でも、管理組合には修繕義務がある?

共用部分については、どんな些細な不具合でも、管理組合には修繕義務がある?
東京地方裁判所平成27年7月17日判決(判例時報2279号57頁)

【ざっくりどんな事案?】

私たちのマンションは分譲後まだ間もないのですが、区分所有者のお一人から管理組合に対し、バルコニーの手すり部分に設置された
透明なガラス(共用部分です)
の一部にシミのようなものがあり、清掃しても解消しないとの訴えがありました。

確かに、シミのようなものは確認できたのですが、眺望が遮られるわけでもありませんし、対策としてはガラスを交換する
しかありませんがその費用は85万円もかかります。

共用部分だからといって、費用対効果も考慮することなく、全て管理組合に修繕義務が生じるのでしょうか?
そんなこと言っていては、いくら管理組合にお金があっても足りないと思うのですが・・・

【裁判所の判断を簡単にいうと?】

1 管理組合は、共用部分に存在する不具合の全てについて、その程度等にかかわらず、修補をする義務を負っているわけではない。
不具合の程度や修補費用等に照らし、合理的と認められる範囲で修補等の対応をする義務を負っているにとどまる。

2 本件では、ガラス越しの眺望に若干の影響が生じるものの、居室やバルコニーの通常の使用に支障が生じるほどではない
他方、修補のためにはガラス交換が必要であり、そのためには85万円を要する。このような事情のもとでは、原告(区分所有者)に
  生じた不利益の程度に比して、被告(管理組合)に過分な経済的負担を強いるものと言わざるを得ない。

3 よって、管理組合には、本件の不具合を修繕する義務はない。

【この裁判例から学べること】

この事案と同じような訴えを組合員から受けてしまい、困った経験のある役員の方や管理会社の方は少なくないのではと思います。

この判決の内容は社会常識に沿った妥当なものであると考えますが、純粋な法律論として考え始めると、
なかなかやっかいな問題であるとも思います。

そのような中で、このような明快な判断を示した裁判例の存在を知っておくと、自信をもって対処できるのではないでしょうか。
地味(?)ですが実務的に非常に重要な裁判例であると思います。