31. 規約の別表に管理費等の具体的な金額が書き込まれている場合、管理費等を値上げするには規約変更として特別決議まで必要?


規約の別表に管理費等の具体的な金額が書き込まれている場合、管理費等を値上げするには規約変更として特別決議まで必要?
東京地方裁判所平成22年8月27日判決(判例集未搭載)



【ざっくりどんな事案?】

私たちの管理規約には、「管理費等の額については、別表第3に定めるものとする。」
との定めがあり、この別表第3に各戸の管理費と修繕積立金の具体的な月額が明記されています。

3年前の総会で、管理費と修繕積立金の値上げが普通決議にて承認されたのですが、
これが規約変更に該当するとの認識はなかったため、特別決議を経てはいませんでした。

ところが、このたび、ある組合員(原告)が、
「値上げには、別表第3の変更が必要だ。よって、規約変更の手続が必要だ。
なのに、これを経ていないから、値上げを承認した決議は無効だ。
だから、値上げ後の金額を払う義務はない!」

と主張し始めてしまいました。



【裁判所の判断を簡単にいうと?】

1 「管理費等の額については、別表第3に定めるものとする」との規約の定めがある
 本件については、管理費等の具体的な金額が規約の内容を構成していると言わざるを得ない。 
 よって、管理費等の値上げのためには、規約変更の手続=特別決議が必要であった。

2 しかし、その後、原告は、3年間にわたり、値上げ後の金額で管理費等を
 管理組合に対して支払ってきた。
この経緯にかんがみると、このたびの値上げについて、
 規約変更の手続=特別決議を経なかったという瑕疵(問題点)は治癒されたと言ってよい。

 結論:組合員(原告)の敗訴!


【この裁判例から学べること】

古典的ですが、今も問題になることがある論点です。
裁判所の判断は別れていますが、大きな傾向としては以下のとおりといえるようです。

 ・この事案のように、規約に、「管理費等の額については、規約の別表第●に定めるものとする」
  との定めがある場合
  
   → 値上げには規約変更が必要

 ・標準管理規約単棟型25条2項のように、規約に、「管理費等の額については、各区分所有者の
  共用部分の共有持分に応じて算出するものとする」
との定めがある場合(=別表を引用していない場合)
   
   → 値上げには規約変更は不要


もっとも、後者の場合でも、裁判所が、必ず「規約変更は不要」と判断してくれる保障はありません。
よって、規約の別表に管理費等の具体的な金額が明記されている場合には、規約に、
「管理費等の金額の変更は普通決議で足りる」という趣旨の定めを盛り込むことをおすすめします。