15. 組合員かどうかはどうやって判断すればよい?

組合員かどうかはどうやって判断すればよい?
福岡高等裁判所平成18年5月11日判決(判例タイムズ1233号255頁)


【ざっくりどんな事案?】

組合員Aさんから管理組合に対し、以前の総会決議が無効であるとして訴訟が提起されました。
私たちも、当該住戸の区分所有者はずっとAさんだと思っていたのですが、問題とされた総会の決議が行われた
当時の登記簿上の名義はAさんの息子であるBさんになっていました。

決議の当時、本当の区分所有者がAさんであったか、それともBさんであったかは、どうやって判断すればいいのでしょうか?
※実際には戸建ての団地管理組合の事案でした。

【裁判所の判断を簡単にいうと?】

管理組合の組合員資格の有無については、あくまでも登記簿上の名義に従い、形式的・画一的に判断すべき。

【この裁判例から学べること】

管理組合のメンバーである組合員は、専有部分の区分所有者とイコールです。
しかし、区分所有者が誰であるかについては、管理組合がリアルタイムで完全に把握することはできません。
通常は、【区分所有権の移転→登記への反映→管理組合への届出】を経て、管理組合が新しい
本当の区分所有者を把握することが可能となります。

しかしながら、我が国の民法上は、登記は効力要件ではなく対抗要件であるとされていることから(民法177条)、
「私は、確かに第三者に区分所有権を譲渡した。しかし、その旨の登記は未了である。」という場合、管理組合との関係で、
本当の区分所有者はどちらであるのかという問題が生じ得ます。

公刊されている裁判例においては、この裁判例と同じく、総会の決議の効力が問題となった際に、
決議の効力を争う者(原告)が組合員であるか(あったか)点が争われたものがいくつかあります。

また、これ以外にも、より身近(=件数が多い)問題として、管理費等の滞納の事案において、登記上の区分所有者と、
本当の(実体法上の)区分所有者に齟齬がある場合に、どちらが管理費等の支払義務を負うのかが問題
となることもあります。
特にこちらの滞納事案の方が裁判例の蓄積も乏しく、実務上は問題となることが多いと感じます。
マンション法(区分所有法)には、「え?こんなことも未解決なの?」という論点が多数ありますが、これもその一つです。

もっとも、私見では、上記のとおり、管理組合が組合員の変更を把握することは容易ではないことからして、この裁判例と同様に、
登記名義によって画一的に判断すべきと確信しています。