7. 専用使用部分の「通常の使用に伴うもの」って具体的にはどういう意味?

専用使用部分の「通常の使用に伴うもの」って具体的にはどういう意味?
仙台高裁平成21年12月24日判決(判例集未搭載)
【ざっくりどんな事案?】
私たちの管理組合の管理規約は標準管理規約に準拠しているのですが、このたび複数の住戸において、
専用使用権が付された共用部分である網入磨ガラス・サッシの戸車・クレセントに、経年劣化による不具合が生じました。
ひとまず管理組合が業者に依頼してこれらの修繕を行い、業者に対する支払も行いました。
しかし、このような経年劣化による不具合の修繕は、規約にいう
「バルコニー等の保存行為・・のうち、通常の使用に伴うもの」に該当するはずです。
そのため、管理組合(原告)として、各専用使用権者(被告)に対し、管理組合が
業者に支払った修繕費用の支払を求めて訴訟を提起しました。
【裁判所の判断を簡単にいうと?】
(1審の仙台地裁の判断)
経年劣化により、多くの住戸において、ほぼ同じ時期に、同じような不具合が生じているから、
「通常の使用に伴うもの」とはいえない。
よって、修繕費用は管理組合の負担となるから、管理組合による請求は認められない。
(仙台高裁の判断)
いずれの部分も、専用使用権者以外の者が日常的に使用するものではなく、日常的な
使用に伴い必然的に劣化していくのだから、経年劣化に基づく不具合は
「通常の使用に伴うもの」に該当する。
よって、修繕費用は専用使用権者(組合員)の負担となるから、管理組合による請求は認められる。
【この裁判例から学べること】
私のように、業務のほとんどをマンション管理に特化している弁護士にとって、
1か月に1件(体感)は受ける相談が、この専用使用部分のメンテナンスに関する費用の
負担者は誰?という問題です。
標準管理規約21条1項では、「通常の使用に伴うもの」は組合員負担であり、それ以外は
管理組合負担とするとされています(なお、「通常の使用に伴うもの」も、総会決議等に
基づき管理組合負担とすることは可能です。)。
しかし、この「通常の使用に伴うもの」という概念は全くもって明瞭ではありません。
そのため、この事案でも、仙台地裁と仙台高裁の判断が真逆なものに別れました。
よって、「通常の使用に伴うもの」という日本語の語義からだけでは、
結論をきちんと予測して判断することは、ある程度諦めるしかないのが現状です。
この問題への対策としては、やはり規約によるアプローチが王道でしょう。
「通常の使用に伴うもの」という概念を残しつつ、これに該当する場合について、
例示も含めて具体的に明記していく以外にないと考えています。
もっとも、その場合の具体例については、これまでのそれぞれのマンションにおける
実例等を踏まえて検討することが不可欠ですので、規約作成者の腕が問われることになります。