4. 総会で決議すれば、専用使用料はいくらでも増額可能?
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総会で決議すれば、専用使用料はいくらでも増額可能?
【東京地方裁判所平成21年10月28日判決(判例集未搭載)】
【ざっくりどんな事案?】
私たちの管理組合では、修繕積立金が不足しており、どうにかして収入を増やす必要に
迫られていました。
そのため、他の階の組合員からうらやましがられていた1階の
専用庭に着目し、その専用使用料を、月額1300円から5200円へと値上げすることを
総会に諮ったところ、無事承認されました。
ところが、専用庭の専用使用権者4戸のうち、1戸(被告)が値上げに反対し、
総会承認後も月額1300円しか払ってきません。
そのため、管理組合(原告)として、この1戸の組合員に対して、
値上げ後の金額との差額を求めて訴訟を提起しました。
【裁判所の判断を簡単にいうと?】
・原告が主張する値上げの根拠事由である、「修繕積立金の確保」や「近隣の相場」は、いずれも具体性や裏付けがない。
・仮にこれらが立証されたとしても、一挙に4倍も値上げするのであるから、「特別の影響を及ぼすべきとき」(区分所有法31条1項)に該当する。
・よって、値上げを承認しなかった被告との関係では、値上げの決議は効力を有しない。
【この裁判例から学べること】
そもそも区分所有法に定めのない「専用使用権」という権利はトラブルに発展しやすい性質があります。
この専用使用権に関する法律関係については、1998(平成10)年の秋に相次いで出された最高裁判決(いずれも
駐車場専用使用権に関するもの)をベースとして、分譲当時からのありとあらゆる資料に基づき、どうにかこうにか
判断していくほかありません。その意味で弁護士泣かせのテーマです。
専用使用料の値上げは、多くのケースでは近隣相場などの何かしらの指標があり、
それに向けての値上げであるからやむを得ない、という理由付けがなされます。
しかし、本件のような専用庭の使用料は、その性質上、近隣相場などの何かしらの
指標を得にくいため、管理組合(原告)による値上げの必要性の立証は困難だったでしょう。
そのような「不利な」戦いであるにもかかわらず、徐々にではなく一挙に4倍も値上げを
したのですから、「特別の影響」が肯定されても全く不思議ではないと私も思います。
専用庭に限らず、専用使用料の値上げは、支払義務者の負担軽減のため、
段階的に行うことを強くおすすめします。それが「特別の影響」該当性の
リスクを減らすことにもつながります。