14. 滞納された管理費等を免除するためには組合員全員の同意が必要?

滞納された管理費等を免除するためには組合員全員の同意が必要?
東京地方裁判所平成30年2月27日判決(判例集未搭載)

【ざっくりどんな事案?】

リゾートマンションを購入したのですが、区分所有法上の管理者となっている管理会社による管理内容に納得がいきません。

特に、管理費等の長期滞納者がいたのですが、もはや回収不可能という理由で、総会に諮り、
滞納分の債権を免除
してしまった点はおかしいと思います。

ネットで見たのですが、法人化していない管理組合では、滞納管理費等を免除するためには、
総会の決議では足りず、組合員全員の同意が必要とのことでした。こんなことをした管理会社は許せませんので、
私一人でも、管理者解任の訴え(区分所有法25条2項)を行うつもりです。

【裁判所の判断を簡単にいうと?】

管理費等支払請求権の免除は、いわゆる権利能力なき社団」である管理組合においても、
総会の決議(=多数決)によって免除することができる。


そして、この場合の総会の決議は普通決議で足りる。「組合員全員の同意が必要」という解釈を
採用することは実質的にも無理がある。


【この裁判例から学べること】

滞納管理費等の金額が増大し、専有部分の市場価値と拮抗するなどの状態に至ってしまった場合、管理組合は、
とにかく現在の区分所有者から新しい区分所有者へと交代を図るため、滞納管理費等の免除を検討せざるを得なくなることがあります。

これは、滞納管理費等は、マンションの購入者にもその支払義務が引き継がれるため(区分所有法8条)、例えば、
「200万円ならこのマンションを買ってもいいけど、承継する滞納管理費等が400万円もあるなら、買っても損するだけだから、いらない」
という事態が生じ得るためです。

管理組合自らが主体的に免除を検討する場合もあれば、管理組合に優先する債権者(公租公課≒自治体であることが多いです。)から、
任意売却や公売を成功させるために免除を求められることもあります。

その際に問題となるのが、「免除するのは仕方ないけれど、どのような決議をとれば免除が可能なのか?」という論点です。
民法上の「権利能力なき社団」や「総有」という概念をめぐり、全員合意(が不可欠)説も存在するため、実務上も困っているのです。

しかしながら、この判決が指摘するように、全員合意を取り付けることは事実上不可能ですから、そのような不可能な結論を法が求めているとは考えられません。よって、「総会決議で可能=多数決で可能」という結論は当然であると考えます。

その上で、普通決議で足りるのか、それとも特別決議まで必要であるのかという点については、理論上の観点のみならず、
個別の管理組合における合意形成の観点などからも、幅広く検討して結論を出すべきと思います。