26. 管理に不満があるからといって、管理費等を滞納することが正当化されることはあり得る?

管理に不満があるからといって、管理費等を滞納することが正当化されることはあり得る?
東京高等裁判所平成29年3月15日判決(判例タイムズ1453号115頁)



【ざっくりどんな事案?】

ある住戸は会社が区分所有者となっています。
区分所有者が、その専有部分について、共用部分の不具合が原因で、漏水被害を受けたという事案です。
この会社の社長が不動産管理に詳しいと自称して、
「このマンションは管理がなっていない!管理会社の言いなりの理事会は無能だ!毎月の管理費の対価としてあるべき
管理がなされていない!」

として、管理費の支払を拒否しはじめました。こんな主張をしているのはこの区分所有者だけです。

仕方ないので、管理費等請求訴訟を起こそうと思うのですが、
訴訟では、このような主張(抗弁)は認められてしまう可能性があるのでしょうか?



【裁判所の判断を簡単にいうと?】

このような漏水被害者であっても、区分所有者が、管理組合の行う管理行為が不満であるからといって、
管理費の納付を怠ることは、信義則に反するから許されない。
なぜなら、財源不足による共用部分の管理の劣化を招き、マンションの共同管理を妨げるからである。



【この裁判例から学べること】

管理に不満があるとして、管理費の支払を拒絶するという事案は、全国的にもまだまだ多くみられます。

しかし、この裁判例の実際の事案のように、たとえ共用部分からの漏水によって自宅内部が被害を受けた
区分所有者であったとしても、だからといって管理費を滞納することは許されないのです。
それ(漏水問題の解決)はそれ、これ(管理費の支払)はこれ、であって全くの別問題だからです。

ましてや、想定事案のような「単純な不満系」の場合、そのような主張(反論)を裁判所が肯定する可能性は
全くのゼロといってよいでしょう。
管理費や修繕積立金の支払義務は、区分所有者としての最低限の義務ですだからです。
想定事案のようなケースでは、滞納者との協議に時間をかけても仕方がないことが多いため、
管理組合としては早々に法的措置をとることをおすすめします。