28. コラム:相続発生!滞納解消までの段取りは?
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【コラム】相続発生!滞納解消までの段取りは?
裁判例のご紹介とは別に、今後は定期的に、実務上、ご相談をいただくことが多い事項について、
コラム形式でご紹介もしていきたいと思います。
最初のコラムは、近年、倍々ゲームのようにご相談・ご依頼が増えています、区分所有者の死亡=相続に伴って
発生してしまった管理費等の滞納問題についてです。
それまできちんと管理費等を支払っていた住戸が、区分所有者の死亡に伴い、滞納を開始してしまうことは珍しくありません。
その理由は、大別すると以下の3通りです。
a 相続人間で争いがあり、マンションの相続人=管理費等が決まらない。
b 区分所有者が死亡したことを、相続人が認識しておらず、対応できていなかった。
c そもそもマンションに価値が乏しく、相続人が相続をしたがらないor相続を放棄してしまった。
一般的には、a→cの順に、解決の難易度が上がっていきます。
相続事案に限りませんが、管理費等の回収の成功率は、最終的には、
その物件の価値の多寡に依存する側面がどうしてもあります。
よって、上記cの場合は、管理組合が赤字覚悟で取り組まなければならない場合もあるでしょう。
とはいえ、管理組合として最初に取り組むべき手続は共通しています。それは【相続人調査】です。
相続人調査とは、具体的には、【戸籍関係書類の収集】と、【家庭裁判所に対する、相続放棄の有無の照会】
の2つの手続を行うことを意味します。
まず、【戸籍関係書類の収集】では、最低限、亡くなった区分所有者の、出生~死亡までの全ての
戸籍関係書類(戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本など)を、各地の自治体から取り寄せます。
管理組合は、相続人ではない第三者ですので、プライバシーの宝庫である戸籍関係書類を取得するためには、
かなり高いハードルがあります。
また、そもそも戸籍関係書類の収集や、収集した戸籍関係書類の読解には、相当な専門的知見が必要です。
よって、通常は、弁護士等に委任して行うことになります。
なお、近時(2023年1月現在)は、郵便事情が極端に悪化していることから、
数年前よりも、戸籍関係書類の収集に要する時間は大幅に増えてしまっています。
戸籍関係が複雑な方の場合、戸籍関係書類を収集するだけでも数ヶ月かかる場合もありますので、
時効との関係で、早期の着手が望まれます。
次に、収集した戸籍関係書類によって確定した戸籍上の相続人が、
相続放棄や限定承認の申出を行っていないかどうかについて、管轄の家庭裁判所へ照会する必要があります。
この照会手続も弁護士等に委任して行うことが通例です。
これに要する期間は、家庭裁判所の規模にもよりますが、数週間程度以上は見込んでおきたいところです。
これらの手続を経て、ようやく、区分所有者の相続人=現時点における本当の区分所有者が判明します。
この区分所有者に対して、どのような方法で管理費等の回収を図っていくかについては、
上記a~cの類型や、マンションの価値、相続人の人数その他一切の事情を踏まえて、
最も効率的な方法を、専門的知見に基づき、事案ごとに検討していくことになります。
この過程で、管理組合が、家庭裁判所に対し、相続財産管理人の選任を申し立てることも増えていますが、
この制度のご説明もなかなかややこしいため、別のコラムにてご紹介したいと思います。